雨やどり


管理人室 -- 日記 -- 2024/01
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2024/01/30 失声
2024/01/28 三角地の調査
2024/01/26 失恋
2024/01/23 上諏訪歩き②
2024/01/18 アイロン
2024/01/15 三角地の風景
2024/01/04 上諏訪歩き①
2024/01/03 狐

2024/01/30 失声

人魚姫にはなれない、と思った。人魚姫は声の代わりに願いをひとつ手に入れ、わたしはどちらも失った。本当は両方ともほしいんだけどね、今は声がほしい。だから、人魚姫にはなれない。

2024/01/28 三角地の調査

そこにあった。ちゃんと存在した。小さな三角の空間。この夜のことは紙の日記に書いたのでここには書かない。情報提供。お店の名前は不明。私が見つけられなかっただけかも。17-23時。火曜定休。また会いたい。マスターにもYねえさんにも。そこに在ってわたしを惹きつけたものはなんだろう、と考えながら帰った。

関連日記:2024/01/15 三角地の風景

2024/01/26 失恋

わたしたちはふたりともよくなりたかった。同じことが好きで、同じほうを見ていたと思う。だけど、そこにたどり着くために、その人は足りないものを探していた。わたしは持っているものを磨こうとした。それで、同じ場所にはいられなくなっちゃったんだと思う。ふたたび似たようなことがあるとしても、まだしばらくはわたしはわたしの歩き方をしていくつもり。いつのときも、わたしといた時間が遠くを歩いている人の味方になっていたらいいな、なんてのはうぬぼれが過ぎるかしら。そのくらいその人といた時間をわたしは愛していた。でも、あの日に思ったように、これでようやく自由に会えるってことなんだと思う。そうであってほしいと願っている。

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2024/01/23 上諏訪歩き②

人と約束をして、21時すぎに街に出た。これからはなるべく外に出たい。あと、もう少し友達がいたほうがいいかなと思っている。波止場は記憶していたそのままの形で存在していた。あとから来たお客さんが、知り合いの親戚だった。田舎は狭い。その後、最近できたばかりらしいお店に行ってみたいと言うので一緒に行く。お店を出たあと「もう行かないな」と言っていて、たぶん私もだなと言わずに思った。感じが悪いわけでは決してなかったけれど。その足でキャスタウェイに行く。お酒を飲んで話している人々(私も含め)を遠くから眺め、これからこの人たちはそれぞれどうなっていくんだろうと思った。あるいは、いつかまた誰かがこの続きをしているだろうか。バナナを買ってきてもらう約束をしたので、それまでは死ねないことになった。約束って不自由! ここ数日なんだかんだで寝不足だったので早めに帰ろうと思っていたのに、結局3時半過ぎにお店を出た。晴れているのに小雪が舞っていてとても寒い夜だった。寒くていい夜だった。「いい夜ですね」と言って、歩いて帰った。
ここ数日考えていることについて、さらに考える。私以外の人はみんな泣いているのに、私だけは涙が出ない。冷たいとか冷めてるとか言われるのもわかる。その夜に書いた紙の日記には、とても前向きなことが書いてある。でも、考えていることが本当に私が感じていることなのか、よくわからなくなる。私が決して考えないことを、みんなが勝手に代わりに口にしている。もしかしたら、みんなが言うように、心の奥底では裏切られたってショックを受けているのかもしれない。そうならば、みんなの言うことを否定することが私自身を守る方法になっている。誰のためとかじゃなく、もっともっと先のことを考えていたいなと思う。

関連日記:2024/01/04 上諏訪歩き①

2024/01/18 アイロン

スカート4枚とワンピース2枚のアイロンをかけながら、さまざまなことの意味や理由を無理やり考えていた。
アイロンがけをしていたワンピースの1枚は最初に作った服だった。そのあと同じ形のワンピースを何枚かつくる間に、型紙はわたしに合うように少しずつ形を変えていった。服を作ることの意味。わたしのことはわたしが一番よく知っているからだと思っていたけれど、真逆かもしれない。思えば、服を作ることは、わからないわたし自身のことを見つけていく作業だ。
このあいだ友達に会う時、イヤリングをしていった。高校生と大学生の頃はほとんど毎日していたと思う。かわいいから。最近はほとんどしない。小さい人たちと関わっていると、イヤリングをしていることはさまざまな意味で危険なのだ。そういう日々の中で、イヤリングをすることがかわいいという考えは自然と消えていった。それなのにイヤリングをつける理由。当時のわたしのままでみんなと会いたかったのか。普段のわたしと違うわたしでいたかったのか。そこまで考えたあとで、わたしは高校生や大学生の頃とそんなに言うほど変わっているのだろうかと思った。
誰とも会わなくなることを、唐突に想像する。好きな人にも二度と会わない。さみしい。誰かを好きになることは、さみしくなる練習。あるいは決意の練習か。どちらだろう、どちらでもないか。迷いの練習かもしれない。いずれにせよ、いつか舞台でナニモノかを演じるための練習なのだろう。そうならば、好きにならずに生きていたい。
そして、今考えたことはきっとは全部嘘だ、本当は意味も理由もないのだろうなと思って、アイロンのスイッチを切った。

2024/01/15 三角地の風景

完全な偏見だけど、ホルンの人って、金管楽器の中で2番目にいい人種だなと思った。1番はやっぱりトロンボーン。トロンボーン吹きっていい人が多い気がする。偏見ですが。
今日はオケの練習でホルンが4本そろっていて楽しかった。吹奏楽をやっていた時は上吹きだったけれど、今はめっきり下吹きになっている。下吹きになりたかったからうれしい。それもこれも、個性というより周りのメンバーに依るような気がする。上吹きやれと言われたらできるくらいの腕前にはしておきたいなと思っている。
帰り道、いつもと違う道を通ってみた。都道123号を走っていた時ちらっと目に入ったお店らしきものが気になって、あとでそのあたりを地図で見てみたがなかなか見つからない。運転中だったしおそらく0.5秒くらいしか見ていないのに、その風景をくっきりと思い出せる。ガラスのドアと窓から明かりが漏れていて、ドア越しに黒い椅子の足元が見えた。窓の近くに提灯がかかっていた。地図は諦めてストリートビューで散歩するとようやく見つかった。三角地だ。調布市富士見町4-**-**。調布ICの近く。今度歩いて行ってみよう。あの辺りはいつも車でしか通らないから、歩かなきゃとかねてから思っていた。どこへでも行けるし行ったほうがいいという気分になっているので、ここも1月か2月のうちには歩くつもり。

2024/01/04 上諏訪歩き①

 実に数年ぶりに上諏訪の夜に出たら、街のようすが変わっていた。それとも変わって見えただけなのか。散歩の心地でいられた夜だった。

 保育園から一緒のふたりと約束をして、日が沈むころ街に出た。ひとりは同じ県内の南のほう、もうひとりは転職して大阪にいて、遠くなってしまったけれど、近かった時もそんなに頻繁に会っていたわけではなかった。わたしたちの関係はたぶん保育園の頃から全然変わらない。いつだったか、保育園の頃のビデオが出てきて見たときにそう思った。
 一通り飲んで食べて、20時頃、コーヒーでも飲みたいねと散歩がてら店を探す。調べると楽茶が営業中となっていたので一応そこを目指しつつ、こんな夜までやっているお店だったかしらと考える。途中の道にポータリーなる場所ができていて、なんじゃ?と思った。2023年10月にできたらしいが全然知らなかった。ここもそうだけれど、リビセンが関わっている場所が増えたなぁと思う。外からやってきてお店を開く人も増えてきている印象。
 そうこうしているうちに楽茶にたどり着いた。“開店”の看板。かたい扉を開けて入る。少し年配の女性の方がやっていたと記憶していたのけれど、どちらかと言うと若い感じの男性がやっておられた。先にいたお客さんがちょうど帰られるところで、店内はわたしたちだけになった。カウンターと小さなテーブル席と座敷があり、座敷に座る。本がたくさんあり、自由に読んでいいことになっていた。販売している本の棚もある(たぶん以前はなかった)。わたしたち3人はそれぞれに黙々と本を読み始めてしまって、店内は静かだった。絵本もあった。選書の趣味が合うなと思った。店内にはレコードもあり、「本と音楽が楽しめる喫茶店」ということらしかった。お店の方と少し話す。わたしが記憶していた女性の甥御さんらしい。本の趣味が合いそうなので、ちょくちょく来て様子を見つつ距離感を図っていきたいなと思った。
 こういうときの解散が素早いところがわたしたちのいいところで、この日も8か月ぶりに会ったわりにはさくっと解散した。せっかくなので、ひとりで夜の街に繰り出すことにする。コロナや仕事を言い訳に、4年も飲みに出ていなかったことに気づく。

 ゆずの灯りがついていることを確認しながら、すでにおなかがいっぱいだったのでまたにする。料理人だったマスターがやっているお店でお通しがちゃんと食事すぎるので。パリテキは相変わらずちゃんとやっている。行くなら後でと思ってひとまず通りすぎる。
 遊がやっているといいなと思ったら、ちょうど年明け初日だったらしい。大手2丁目にあるこのお店は、2-chomeという名前だった(そのまんま)。名前が変わったことは聞いていたが、変わってから初めて来た。階段を上がって奥の扉を開ける。ママさんが相変わらず美人でかわいらしくて魔女だった。先客が3名、いい方々だったので楽しい夜だった。思ったよりも長居して、日が変わる頃お会計をお願いする。この後まだどこかへ行こうかしらと考えていると、ママさんに「どこか行こうと思ってます?」と言い当てられてしまった。
 そういうわけで、一緒に飲んでいた方が「あそこのママさんは諏訪の三大妖怪のひとりだ」と言うスナック園に行くことになった。ほんとに妖怪だった! いい意味で。お店もやばかった。たぶん、いい意味で。めちゃめちゃうるさかった。そのままの意味で。若い人がたくさん来ていて、ずっとこうだったんだろうと思った。その時々の若い人たちがいる。もちろん若くない人もいる。そういえばこの間、知り合いから、園に来ていると連絡をもらっていた。どこだろうと思ったそれが園だったと、帰ったあとで思い出した。ちなみにそれはおじいちゃんたちの集団。三大妖怪のあとのおふたりは誰なんだろう。今度聞こう。おひとりは波止場かな…
 お店を出ておとなしく帰るつもりがマイケルズが開いていたので、せっかくだから寄る。3時過ぎ、ようやくおとなしく帰る。

 楽茶に置いてあってもらってきたいろいろな店のショップカードを眺める。全然知らなかったところや気になっていたのに行っていないところばかりある。ここにも人間がちゃんとこんなにいたんだと思った。

2024/01/03 狐

 1日に、静岡の友達に連絡した数分後に、地面が揺れた。
 2日の朝、3時半に車で家を出て、休憩なしでちょうど7時間くらいで尾道に着いた。コーヒーを飲もうと思って、黄色いランプがピカピカしている喫茶店に入った。ブリッヂ。「食べ」とレモンケーキをもらった。千光寺まで歩く。猫の細道ここまで、という看板を通りすぎ、もしかすると次に来たときはないかもしれないような道を通った。岩の隙間を抜けると、人のいる道に戻った。振り向くともうその道はなくなっていた(そう見えた)。初詣の人がずらっと並んでいたのでお参りはしない。再び人のいない道を歩いていたら、上も下も行き止まりの階段に迷い込んでしまった。ちょっとだけ引き返して、無理やり人のいる道に戻った。展望台でぼんやりしてから、人の少ないほうを選んで下る。細くて急な路地。急坂で原付バイクが木に頭を突っ込むように止まっていて、木のほうも、長い年月それを受け止めてきたのだろうと思われる形になっていた。迷路のような道の途中、段差の隙間の3段ほどの階段で、高校生くらいの子がふたり座って話をしていて、今思うと狐っぽかったなと思う。人だったらごめんね。駅のほうまで下りてきて、小さなジャム屋さんでマーマレードの小瓶3セットを買った。そのままぐるぐると歩く。街灯がかわいい。ほどなく気づく。建物に付いた灯りもかわいい。またほどなくして気づく。建物もかわいい。
 14時頃、駐車場に戻り、向島まで橋を渡って行く。高見山頂上を目指した。絶対にすれちがえない山道を、ナビに案内されるがままに通る。向こうから誰も来ないでくれという祈りが届いてよかった。頂上から500メートルほど下に車を停めて、サザンカの道を抜けて歩く。わたしの秘密の花園だと思った。来たときにいた人が全員いなくなるくらいまでずっと海と島々を眺めた。ナビがさっきの道を再び案内したが、無視して違う道から下った。海を眺めて、宿をとっていた福山市に向かった。
 宿に荷物を置いて、福山城へ行った。案内板をじっと読んでいたら、警備のおじさんがいろいろ話してくれた。表から見ると白く、裏から見ると黒い城。すぐ裏の静かな神社でようやく初詣をして、駅の反対側へ行く。てきとうにご飯を食べて、てきとうな飲み屋で一杯だけ飲んで、早めに帰って寝た。福山はちゃんと都市って感じね。
 3日、5時半に出て静岡に向かう。本当は朝の街にも会いたかったのだけれど、いつかまた。大阪のあたりも豊橋のあたりも交通量は多かったものの渋滞はなく、予定より1時間早く13時には着いた。出迎えてくれた友達が赤ちゃんを抱いていて、いつの間にか母になっていてびっくりした。友達の旦那さんのお茶屋さんに行って、お茶をいただいた。そこで、友達のお姉さん(一度会ったことがある)とお父さんにも会った。友達の家で夕飯までいただく。夜の始めに降った雨のせいで霧がすごかったが、2時間ほどで帰れた。日が変わる前には家に着いた。
 どこまでが本当で、どのくらい夢を見ていたのか。あるいは、ずっと狐に化かされていたのかもしれない。

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