雨やどり


岡田淳さんの本を読む -- そこから逃げだす魔法のことば
ぼくとおじいちゃんシリーズ第2作目。
 

日常

今回も、おじいちゃんの話はおもしろい。引き込まれていく。なぜこんなに引き込まれるかと言えば、これが“日常の会話”だからだと思う。日常の会話でありながら、そうとは思えないスケールのお話が次々と出てくるのが、とてもおもしろい。
第1作目の感想文に漫才みたいと書いたけれど、落語みたいでもあるなと思う。(冴えすぎの)ボケと(かわいい)ツッコミがいて、ちゃんとオチまでついている。本を読んでいるというより、まさにふたりの会話を聞いているような気分になる。独特のテンポ感や間合いが、わかる。

『そこから逃げだす魔法のことば』

こたつでねたら、ネコになる。このことばをおじいちゃんが聞いた時のお話。ほんとうとは思えない(そしてたぶん「ぼく」も信じていない)のだけれど、妙に納得してしまう部分のあるおじいちゃんの話に、ぐんぐん引き込まれる。こたつから出るには、やはりそれしかないなぁ。

『おじいちゃんの打ち出の小槌』

細かいところまで本当にあったことのように話すおじいちゃんがすごい。このふしぎでおかしいお話を、最後の「そういうわけで、……」というひとことのためにし続けてきたのかと思うと、またおかしい。

『安全ピンつきの大冒険』

普通なら想像もつかないような安全ピンがいろいろ出てきて、それだけで楽しい。「ぼく」もだんだんのってくる。海賊の出てくるお話でこんなに平和な物語が、ほかにあるだろうか。

『めちゃめちゃようみえる目』

どの話も心の底から笑いながら読んだけれど、この本の中ではこのお話が一番印象に残っている。顔の毛穴から月面着陸まで出てくるようなスケール感が楽しくて、好きだ。「日常の会話」の中でいきなり宇宙にまで目が届く(!)のが、とてもいい。

『しゃべるカラス』

いい話。第1作目の「雪の恩返し」然り、半分は嘘でも半分はほんとうだと思えるような話。おじいちゃんはきっと「気持ちのええ町」を心の底から望んでいて、そういうひとがいることが、みんなの心にカラスの声をきかせたのだろう。

『雨女』

突然大声を出すおじいちゃんの声が聞こえてくるようでおかしかった。結末がおじいちゃんらしくて、岡田淳さんらしくて、いい。……と書いてふと気づいた。第1作目の感想文に「ぼく」は岡田淳さんなんじゃないだろうか、と書いたけれど、おじいちゃんもまた岡田淳さんなのかもしれない。


2019/11/13・2022/01/30

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