雨やどり


岡田淳さんの本を読む -- わすれものの森
浦川良治さんとの共作。21975年3月20日に出版され絶版となっていた、ねべりよん作『忘れものの森』が、2015年6月に『わすれものの森』として復刊。
 

伝えたいこと

1975年に発行された『忘れものの森』の物語のあとには、「目を閉じると、小学生だったころのぼった木のようすが、今でも心にうかんできます。あの木はぼくの友だちだったのです」とある。この物語を通して作者たちが伝えたいことがあるのだとしたら、「ものをたいせつに」とかいうことではなく、こういうことだろうと思う。だから、物語として純粋におもしろい。私にもそういう日々が在ったこと、これからにも在ることを忘れずにいたい。
 

思い出

『わすれものの森』のおわりには、この物語が描かれた経緯の章がある。そこまで物語みたいで素敵だ。おふたりが語りあった「寓」という喫茶店は今もあるのだろうかと思い、調べてみた。同じ名前の店が神戸にあるようだ。写真などは一切出てこず、今もやっているのかは、行ってみるか、電話をしてみるかしなければわからない。そもそもそこなのかもわからない。物語のような章が、実在する場所と繋がるなんて、わくわくする。今度行ってみようと思う。
「ねべりよん」というペンネームになったわけもおもしろい。ほんとう、話を聞くまで、まさか「寝屁」だなんて思いもしない。それを、正直に書いてしまうところがまたいい。
物語自体も、とてもきれいで、純粋におもしろい。しかしそれだけでなく、この物語には、岡田淳さんと浦川良治さんが共に過ごした日々が詰まっているのを感じる。その思い出を私たちが思うことはないけれど、そういう日々があったことを想像する。思い出がたくさん詰まっているから、読んでいてとても親しい気持ちになるのだろう。
 
 
2019/11/07

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