『鬼ヶ島通信』第70+1号に収載、書下ろし。
舞台
舞台は、日曜日の昼下がり、小学校の中庭のベンチ。もう、これだけで、あまりにすてきだ。「わすれてしまいたい」と言った「わたし」のもとに、トカゲのおばさんが現れ、自分のともだちの話をする。岡田淳さんの描くこういう連中(ご本人の言葉をお借りしている)が、好きだ。このトカゲも、とてもよかった。
残酷
トカゲのおばさんが話す、トカゲのおともだちの話。やはり、岡田淳さんの物語には時々、残酷なところがある。その残酷さを、子どもの私はけっこうしっかりと受け止めていたし、大きくなった今の私もまた違う方向から眺めてみたりしている。
ファンタジー
これは「ファンタジー」という特集の中で書かれた物語だ。ファンタジー、つまり、幻想。しかし、私にはどうも「ほんとうにあったのかもしれない」としか思えない。物語に出てくる「わたし」も、「へんな夢……」とつぶやきながら「ほんとうかもしれない」ともきっと思っているだろう。夢だとしても、あったことなのだ。現実かどうかということとは別のところにたしかに存在する夢。その夢は日常のなかにある。岡田淳さんの描く「ファンタジー」は、夢と現実、日常と非日常、反対のように思えることがちょうどいいバランスをとっている。
2020/01/05
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