不思議に出会った桜若葉小学校の子どもたち5人のお話。
第一話『トモローとアミは中庭で』
トラブルを解決すべくやって来たレオンだが、彼は何でもできる英雄ではないところがいい。コケコッコの事件を解決したのは、ほとんどトモローとアミだと言ってもいい。しかし憎めないレオンの表情に親しみを感じる。
さいごに「だれかに話しても、信じてくれないと思う」「ぼくもそう思う」と言い合うふたりは、この不思議がほんとうにあったことだと信じている。その証拠にコンパスがあって、あした、ふたりがこの話をするだろうことが嬉しい。
第二話『天才ツボ押し少年シンノスケ』
人のことをよく見ることができるから、教頭先生をはじめからいい人だと思っているし、ツボ押しも上手なのだろう。そのシンノスケが、偽の教頭先生に頼まれ、ジュリエットの全身をほぐしていく。なんとも気持ちよさそうだ。初めて読んだ大学生のとき、読むだけで私のなかのいろいろがほぐれていくのを感じたのを覚えている。さいごに目を丸くする偽の教頭先生。シンスケの目(手?)に簡単に見抜かれてしまうレオンの、完璧でないキャラクターが、いい。
第三話『ソウタのセンセイ』
雑誌『飛ぶ教室』第29号(2012年4月25日発行)にも載っているお話。少し変わっている部分もあった。先生の名前。カエルにメアリ・ピンポンという名前がついたこと。ある夜ソウタの耳元に現れたレオンの話、主にレオン自身について話す時。岡田淳さんの挿絵があること(挿絵が見せてくれる世界はすごいと改めて感じる)。など。
センセイはさいごまで“先生”ではなく「センセイ」であるのがよかった。あだ名のような役割を果たしている。ふたり(一人と一匹)の関係が、一般的な“先生と生徒”ではなく、ふたりだけのものだとわかる。ふたりは仲良しなのだ。
第四話『レイカのおじさんたち』
助けてもらったお礼をしているのか、レイカに何か言いに来たのか、どちらだろうか。どちらもだろうな。「恩返しにこんなことをした」と言うわりに「あまりとんでもないことはいわないほうがいいよ」なんてしっかり世話まで焼いている。レオンらしいなと思う。
不思議
これを読むと、不思議な世界は隠れているのではなく、気づいていないだけだと思える。不思議はそこらへんにあっていつでも出会えるはずなのに、思い込みやなんかのせいで見えていないだけなのだ。子どもたちは不思議に、不思議のほうも子どもたちに、出会う運命だったのだろうなと思う。
2019/11/10
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