雨やどり


岡田淳さんの本を読む -- カメレオンのレオン つぎつぎとへんなこと

桜若葉小学校

舞台は、桜若葉小学校。私たち読者の母校だ。世の中にはたくさんの同窓生がいることを思うと、うれしい。その桜若葉小学校で、「へんなこと」がつぎつぎに起こる。
 

しずかにしなさい

「しずかにしなさい」の章で、ふくらんだ風船に押しつぶされながらも、みんなはくすぐったい気分になる。この「くすぐったい気分」というのは、実際に体験してみないと言い表しようのない感覚だ。この場面は読むだけで、このクラスのひとりになって、くすぐったさを体験しているように感じる。
 

オバケのいたずら

ここでようやく、新聞記者(絵を見ればレオンだとわかる)やテントウムシとして登場していたレオンが登場する。本のタイトルになっているにもかかわらず、まだ登場していなかった。ようやく登場である。
レオンは、人々の前で「オバケのいたずら」という言葉を意図的にたくさん使う。得体の知れないものに対する人々の不安を和らげるために、これまでに起きた数々の「へんなこと」に名前をつけたレオンは賢い。
 

日常

いたずらは、次第に、笑い話ではすまなくなっていく。レオンはアリサの前に姿をあらわす。ふたりのやりとりは、あまりにものどかだ。百年クラゲに立ち向かうぞ! という気迫は一切ない。それが、日常らしくてとてもいい。
これだけ違う世界の生きものが登場して、いろいろと事件を起こしても、日常のことのように感じてしまう。一枚の画用紙のおもてとうらにそれぞれ世界があって、画用紙にある小さな穴からでてくる、というレオンの説明は、作者のふしぎな世界に対する姿勢をよく表している言葉なのだろうと思う。
 

戦い(?)のシーン

アリサがヴァイオリンを弾くシーンは、とてもハラハラする。その中でふらふらとんでいくテントウムシの姿が、ありありと目に浮かぶ。アリサのヴァイオリンを聞くときのレオンがおもしろい。ついには、自分が弾かれることになり、ぐったりするレオンをアリサは無邪気に心配するのも可笑しい。
百年クラゲは自分をとりもどし、もとの姿に戻る。“敵を倒す”ための戦いではなく、本当の姿を“とりもどす”ための戦いだったことが、この物語の雰囲気を最後まで明るくしている。
世界中のひとがまったく気づかなくても、すごい出来事が、たしかにあった。アリサがそのことをずっと覚えているだろうと分かるラストがいい。
 

ページ番号の横

レオンがさまざまに姿を変えると、ページ番号の横に描かれた絵も変わるのに、遊び心を感じる。こういうユーモアや遊び心のセンスが、いつも、本当に好きだ。
 
 
2019/11/10

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