雨やどり


岡田淳さんの本を読む -- まよなかの魔女の秘密
こそあどの森の物語シリーズ第2巻。

住人紹介

はじめの「こそあどの森にすんでいるひとたち」の5コマ漫画がとてもいい。おもしろいし、たったこれだけで彼らのことがよくわかる。

ホホッホウ

森でスキッパーが見つけたジバリフクロウが「ホホッホウ」「ホッホ」と言う。一度(あるいは何度も)読んで、フクロウの正体を知っている読者には「スキッパー」「ポット」と聞こえてくる。分かって読むと余計におかしい。しかし、初めて読んだときのようにドキドキしながら読める。

思う・言う

ポットさんがいなくなったと分かった後、こそあどの森の住人たちで会議をする。会議のあと、スキッパーが何も発言できなかったことを思ってすこしうつむく。その場では思いつかなかったことを、後になって思いつく。その気持ちは、私はとてもよく分かった。その場でぱっと自分の思うことを言うのは、すごく勇気がいることだ。それが上手にできないこともあるけれど、黙っていることは流されているのではないのだと、スキッパーを見て心強く思う。“言う”ことが苦手でも“思う”をきちんとしている。黙っていて“思う”こともしない人や、“言う”ばかりで“思う”がない人も、世の中にはたくさんいる。“思う”こと、“考える”ことは、まず一番に必要だ。
いっぽうのふたごは、すぐにいろんなことを“言う”。「思いつき」と彼女たちは言っていたけれど、そのセンスがすごい。思いつきのセンスというか、想像力というか。ふざけているように見えて、ふたりにとっては大まじめなのだろう。それでもやっぱり、ちゃっかりしているのが、とてもかわいい。トメイトウとのシーンでは、意外にしっかりしたシナモンの姿も見られる。ふたりの行動力は、スキッパーを助けたり困らせたりする。

ポットさん

さいごのポットさんの行動はぐっとくる。ポットさんがトメイトウを守ろうとしたのはのは、何かや誰かのためではないのだろう。これは“悪者をたおす物語”ではないのだと改めて思う。そもそも、トメイトウのことを“悪い”魔女だとは最初からだれも言っていない。ポットさんは、トマトさんと同じようにトメイトウのことも好きなのだと分かる。それを聞いたスキッパーは「わからないなあと思」うのである。とても粋なシーンだ。

夏至

この物語を読んでからは、毎年、夏至の日からの3日間、(魔女、今年はおとなしくしているな)とか思ってみるのだ。


2019/11/20

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