雨やどり


岡田淳さんの本を読む -- ふしぎな木の実の料理法
こそあどの森の物語シリーズ第1巻。
 

1冊目

一番最初に読んだ、岡田淳さんの本。いつ読んでもこんなに心躍るのは、はじめて読んだあの日の感覚を体がずっと覚えているからだろう。
こそあどの森の物語シリーズの中でも1巻は一番多く読んでいる。小学生の頃は何度も読んだり眺めたりしたし、ぬまばあさんの頃から新刊に追いついた私は、新刊が出るたびに、第1巻から読み返していたから。この第1巻を読むたびに、今となってはもうかなり親しい彼らと、つい昨日も会っていたように再び出会えるのが嬉しい。

登場人物

第1巻では、登場人物たちがどんな人たちなのかが分かる。放っておこうにもどうしてもポアポアが気になってしまうスキッパーは、勇気をふるって、こそあどの森の家々を訪ねて歩く。みんながこれまでどんなふうに生きてきたかは書かれていないけれど、それを想像させられる。具体的なことは分からなくても、“いま”の前に、それぞれに生活が続いてきていたことが分かる。だから、はじめからみんなにこんなに親しい気持ちになるのだろう。

みんなの住んでいる家もいい。挿絵をずっと眺めていられる。これらの家は、私たちの“夢”だ。秘密基地に憧れるように、どの家にも憧れた。どこかへ旅に出るような物語ではないのに冒険物語のようにわくわくするのは、そのおかげだと思う。

ジャム

トマトさんのジャムのつくりかたがとてもすてきだ。私だったら何を思い浮かべるかな、と彼らとともに考える。3つ、選べないなぁ。できあがったジャムを紅茶に入れて飲むシーンの幸福感は、読者にまで伝わる。スキッパーの中で広がる幸福感と、スキッパーがそっと目をあけたときにさらに広がる幸福感に、あたたかいため息が出る。
ポアポア(いいもの)はみんなでわけなければならない。“わける”ということは“同じものを一緒に手にする”とも言えると思う。彼らは、ポアポアとともに時間や気持ちもわけあったのだろう。そしてさいごには幸福も。

成長ではない

この物語がスキッパーの成長物語ではないところがいい。はじめからスキッパーはいいやつだった。人と関わるのは苦手だったスキッパーが、この物語の終わりにはみんなと関わることを楽しく思う。このことは、スキッパーがさらにいいやつになっていくことを読者に思わせる。(「やつ」と言ってすみません。いい子もいい人もしっくりこないので、親しみを込めて、あえてこう言わせてもらいました。)成長ではなく、ただ、よくなっていく(あるいは変わっていく)姿が、とても自然にえがかれている。


2019/11/20

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