雨やどり


岡田淳さんの本を読む -- いちばんおいしい柿
『鬼ヶ島通信』第70+7号収載。特集「食べる」。ご自身のこれまでのことについてと作品について、「食」の観点から書かれている。
 

おいしい“状況”

ご自身の話は、小学校高学年くらいのお話が多い。友人の家で食事をともにする話。お父さんの誕生日プレゼントの話(これがこの文章のタイトルに関連している)。岡田淳さんの体験の中で、食べ物自体ももちろんおいしいのだろうけれど、そこに「おいしい状況」があることがわかる。岡田淳さんの物語にもそういうシーンがたくさん出てくることに納得する。例えば、この文章でも、『ようこそ、おまけの時間に』の「かくべつな味」のアメ玉のことが書かれている。

暮らしのやりかた

「食」を通して、それぞれの家にそれぞれの暮らしのやりかたがあることを知った、という内容の一文がある。「こそあどの森の物語」シリーズのことも話題に挙げている。家によって食べる物がちがうことは意識したそうだ。「こそあどの森の物語」シリーズの食事のシーンはとてもいい。スキッパーの缶詰も、ふたごのお菓子も、湯わかしの家のあたたかい料理も……、どれも魅力的だ。それは彼らのキャラクターの一部にもなっている。そのくらい「食」というものは暮らしと関係が深いのだと、気づかされた。

コーヒー

そして、この文章を読んでいて感じるのは、岡田淳さんもご自身の書く食事のシーンが好きなのだろうということだ。『放課後の時間割』で「ぼく」がペーパーフィルターでいれたコーヒーを飲むシーンを挙げて、「好きだ」とも書いている。「ペーパーフィルターで」ではなかったら、物語の雰囲気はすこし違っただろう。コーヒーと言えば、『学校ウサギをつかまえろ』でさいごにみんなでインスタントコーヒーを飲むシーンが私はとても好きだ。場面ごとのちょっとした空気感のつくられかたがすごい、と改めて思わされる。


2022/01/17

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