雨やどり


岡田淳さんの本を読む -- イモムシは……
『現代童話Ⅴ』(今江祥智・山下明生編)収載。短編。

書かれていない声

ただこの話をするだけでも十分おもしろいのに、これはクラスの子どもたちに向けて話される。だから、(文章では書かれてはいない)野次やひやかしに対する言葉もある。野次やひやかしだってもちろん、仲の良い彼らの関係を示す意味で存在する。
演劇的だなぁと思う。喋っていない人や書かれていない人の振る舞いが、きちんと感じられる。声が聞こえる。だから親しみがわくし、ほんの短い間にこの世界に引き込まれてしまう。つまり、この話自体が物語なのではなく、この話をする場面が物語なのである。

話す

そして、こうして話して聞かせる場面は、これがいつの時代にも、そしてどこの場所にもあることだと思えるのがいい。
現役の子どもは、自分たちが今いる場所のことのように思って読むだろうし、大人も学校にいた頃こんなふうだったなと思ったりするだろう。どこの小学校でもこういうことはある。そう思えるくらい、身近な物語なのだ。


2019/11/06

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