雨やどり


岡田淳さんの本を読む -- チョコレートのおみやげ
異人館と港。坂道。関西弁。まさに神戸だ。植田真さんの絵も相まって、神戸の街の雰囲気が詰まっているような一冊。小学校5年生のわたし(ゆきちゃん)とみこおばさんが、公園のベンチでチョコレートを食べながら話をする。植田真さんのブログによると、1999年にリブリオ出版から出版された「兵庫の童話」という本に収載されているお話らしい。
チョコレートを食べ「時間がとけていくみたい」と言ったみこおばさんの言葉から、男とニワトリの物語が生まれ出す。とても優しく、自由な物語だ。わたしとみこおばさんの物語、男とニワトリの物語、このどちらもが、どう進んでもいい自由さがある。二人が話しているだけなのに、だからこそなのか、物語がこんなにも広がっていく自由さがある。そして最後はまた、「時間がとけていくみたい」の言葉によって、全く別々のところで起きていたように思えたふたつの物語が自然と合わさるようにまとまって、ひとつの物語として終わる。


2021/05/28

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