雨やどり


岡田淳さんの本を読む -- アチチの小鬼
ぼくとおじいちゃんシリーズ第3作目。

集まる

どのお語もとてもおもしろい。「アチチの小鬼」は雑誌『飛ぶ教室』第47号(2016年10月25日発行)にも「どっちの道?」として載っていたが、こうして、おじいちゃんとぼくのシーンがいくつも集まると、ふたりの「日常」が見えてくる。テンポの良いやりとりに、親しみをさらにもって引き込まれていく気がする。

『サキザキくんの特技』

クロワッサンの話がいきなり終わったと思ったら、そういうことだったのか。読んでいくうちにわかってくる感覚が楽しい。

『たのまれたら』

急におとぎ話のような話が出てきても、おとぎ話と同じ結末を迎えないのが、おじいちゃんの話のいいところだ。

『ゆでたまごのあくび』

読んだ後しばらくは、このお話を思い出してはニヤニヤしてしまう。すごくいい。ゆでたまごの中に宇宙が広がっていることを、こんなに自然に思わせてくるところ、さすがである。『ポアンアンのにおい』の解説で増田善昭さんが、「ひとりひとりの中に広大な宇宙が存在していることを証明していく」岡田淳さんのエピソードを書いている。このエピソードもすごく好きだ。『放課後の時間割』の「しゃっくり」なんかもいい。この、広がっていく感じが、好き。そして広がった宇宙が、たったひとつのゆでたまごの中にあるのが、すごくいい。
オチも最高だと思う。岡田淳さんの作品は、作者自身が挿絵をされていることが多いけれど、このシリーズは田中六大さんが挿絵を描いている。「ゆでたまごのあくび」のオチのシーンの挿絵が、かわいい。

『ウミンバの指輪』

読んだ本にヤマンバが出てきたと言う「ぼく」に対して、「ええ本」と迷いなく言えるおじいちゃんがすてきだ。ウミンバに「おせわになった」というひとことには、思い切り笑った。

『アチチの小鬼』

『飛ぶ教室』第29号に「どっちの道?」として収載。
小鬼の出てくるお話が、おじいちゃんとぼくのするゲームの中でできあがっていく。この立体感がすごい。小鬼もこれだけ考えてもらったのだから、結局、大活躍できてよかった。


2019/11/13・2022/01/30

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